RYAN GANDER / ライアン・ガンダー

By physical or cognitive means (Broken Window Theory 02 August)

 

2019

 

ライアン・ガンダーは、コンセプチュアートの旗手として知られ、ヴェネチアビエンナーレやドクメンタなどの大規模な芸術祭や世界各地での展覧会に多数参加しており、2013年から2016年にかけては、個展「Make every show like it’s your last」がヨーロッパ、アメリカ大陸を巡回した。その作品は、既に存在している美術作品や普段の生活で遭遇する物事などを素材として、オブジェ、インスタレーション、絵画、写真、映像、さらには出版やキュレーションへと及び、既成の型にはまらない、多様な表現形態をとっている。ガンダーに特徴的なのは、意外なものの結合、架空の状況の設定、情報の部分的な隠蔽、ユーモアの導入、過去と未来への誘導など、作品にまつわる思考を重要視していることであり、その手法はユニークかつ、示唆に富んでいる。そして、美術全般についての考察や、見ることについての洞察、日常経験の分析など、知的な思考が制作の背景となっている。その作品は、鑑賞者の想像力を活性化し、新たな思考回路を生み出すとともに、物事の認識を拡張する、「世界を読み解くための装置」とも言えるものである。

《By physical or cognitive means (Broken Window Theory 02 August)》は、一見すると抽象絵画のようであるが、テーブルに積み重ねて置かれたガラスの板をハンマーで粉砕し、黒いダクトテープでその亀裂を留めたものであり、計画されたアクシデントによって引き起こされる瞬間に、偶然も作用しながら制作されたものである。ガラスの層の内側には、この作品についての説明が書かれたフォーチュンクッキーの紙が隠されているが、フレームを外して作品を解体しない限り、書かれている内容を知ることはできず、鑑賞者の目に触れないまま、作品の中に存在し続ける。タイトルが示すように、この作品は、1980年代にニューヨークで発表された「割れ窓理論」に着想を得たものである。「割れ窓理論」とは、割れた窓を修理することで、その地域の犯罪率が低下するということを証明した理論で、視覚情報が社会における伝達力を持っていることが明らかにされている。こうしたニューヨークの社会学的な変容の歴史を参照しながら、人間が周囲の美学的な環境によってどれほど深く影響を受けているかを示唆している。

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