LEANDRO ERLICH
レアンドロ・エルリッヒ
1973年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。主な個展に、ローマ現代美術館(イタリア、2006年)、MoMA PS1(ニューヨーク、2008年)、エスパシオ・フンダシオン・テレフォニカ(マドリッド、2017年)、ニューバーガー美術館(ニューヨーク、2017年)などがある。国内では、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(新潟、2006年、2012年)、瀬戸内国際芸術祭2010(香川、2010年)などに参加し、2014年金沢21世紀美術館、2017年森美術館で個展を開催。
建設中のSHIROIYA HOTELを初めて訪れたとき、既存の構造物を残しながらまったく新しいものを生み出すという、ソウ(藤本壮介氏)の斬新なアプローチに感銘を受けました。
解体から生まれる創造ーーそれはまさにクリエイティビティの本質ともいえますが、
ここではそれとは逆の不思議なプロセスを目の当たりにした気がしました。
ソウの作業を見ていると、この建物は、既存の形に新しいアイデアを取り入れることで非常にユニークな成果が生まれ、他に類を見ないものになるだろうと実感しました。
結果として、元々の建物部分をダイナミックに開削して生まれたスペースでは、空っぽの空間と、そこに漂う空気がもつ本来のパワーが浮き彫りになっています。その瞬間、
私はイタリアの作家イタロ・カルヴィーノの小説『見えない都市』の中にいるような気がしました。
この物語では、建物自体は目には見えないけれど、
建物を構成するパイプや電気管は見えるといった不思議な景色が描かれています。
そこから私は今回の建築のディテールを目に見えない生き物の血管のように思い描きました。
これが、建物全体に走る《ライティング・パイプ》の背後にあるインスピレーション源となっています。
建築とは、人間の想像力の表れであると同時に、今この瞬間の創造性、
そして日常生活との接点となるアートの力の出発点でもあるのです。
レアンドロ・エルリッヒ| LEANDRO ERLICH